図鑑・レシピ

クロモジ(黒文字)
クスノキ科 クロモジ属

樹皮や枝に見られる黒い文字のような斑紋が名の由来のひとつ。全体に品のある豊かな香りがあり、国学者の柳田國男が“日本人の鼻の記憶”と位置付けた和のアロマの代表樹木。伝統的にお茶や酒、煎じて胃腸の薬やお風呂、つまようじなど暮らしに多用されてきた。春先に淡黄色の花と新芽が同時に展開する。秋には葉が黄色く色づいて、林縁を彩る。

カキドオシ(垣通)
シソ科 カキドオシ属

丸い葉が愛らしいが「垣根を通り抜けるほどに生命力が強い」ことに通じる驚きの繁殖力も特徴。生薬名は連銭草といい、コインのような葉が連なる様子から。利尿や血糖降下、鎮咳などの作用で知られるほか、子どもの疳の虫をとる”かんとりそう”と呼ばれ、お茶で親しまれてきた。葉を摘むとミントやバジルのようなスッキリとした香りが広がり、料理にも大活躍。丈夫で育てやすいため、グリーンインテリアや庭のグランドカバーにも。

ウメ(梅)
バラ科 サクラ属

万葉集ではサクラ43首に対しウメ110首が詠まれ、都人にとって花といえば山に咲くサクラより栽培種のウメの方が身近だった。幹は縦方向に裂け目が入るのが特徴。果実は強い酸味が特徴で、果物や茶菓子に、また調味料にも使われ「塩梅(あんばい)」の語源にもなっている。梅干しは中国の古い医書で薬として登場。強い酸味が消化液分泌を促し、胃内の消化酵素を活発にするので、胃が弱った時の梅がゆは最適なメニュー。

アカメガシワ(赤芽柏)
トウダイグサ科 アカメガシワ属

春が訪れた都会の真ん中で、アスファルトの割れ目から生えだす若い樹木。早春に萌芽し、たった1~2ヶ月の間に樹高が1メートルに達する生長の早さは「パイオニアプランツ」の真骨頂だ。種子は高温に晒されると発芽率が高まる稀有な性質をもつ。その生命力の強さはそのまま高い薬効につながり、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などに効果を発揮する。外用薬としても有能で、樹皮は現在「専ら医薬品」に収載されている。

ホオノキ

ホオノキ(朴木)
モクレン科 モクレン属

枝の先にまるで大きな花弁のように放射状に広がる数枚の葉は、単葉では日本でもっとも長い葉。長さは大きなもので60センチにも達するが、ビッグサイズは葉だけでなく30メートルにもなる樹高や初夏に華やかな森を彩る花も同じだ。
名の由来は「包(ほほ)む」から来るとも。中部地方では、川魚や野菜を包んで蒸し焼きにする「朴葉焼き」や「朴葉味噌」の食文化が有名。

エゴノキ(野茉莉
エゴノキ科 エゴノキ属

初夏にさしかかる5~6月ごろ、チャイム(鈴)のような形をした甘い香りを持つ五角形の白花が、葉の付け根から下向きに咲き乱れる。その光景は下から見るとまるで枝いっぱいに降り注ぐ星のよう。
ヤマガラが大好物の果実には界面活性作用をもつサポニン類が多く含まれ、洗剤などに用いられた。

ヌルデ

ヌルデ(白膠木)
ウルシ科 ヌルデ属

名の由来は昔、幹を傷つけて出る白い汁を塗料に使ったことから。秋の果実には「リンゴ酸カルシウム」を成分とする白い粉が吹き、塩が手に入りにくい山林で代用された。若芽に寄生したヌルデシロアブラムシによる「虫こぶ」は黒紫色の「五倍子(ふし)」の原料となり、江戸時代にはお歯黒や喪服などの染料として用いられた。

タラノキ

タラノキ(楤木)
ウコギ科 タラノキ属

枝や幹に鋭いトゲがあり、別名「鬼の金棒」の由来にもなっている。春が深まった頃に出てくる新芽は食用にされ「タラノメ」と呼ばれ山菜の王様だ。あまり知られていないが、中医学や漢方ではほとんど使われていない日本の民間療法『和薬』の代表樹木でもある。使用部位は根の皮(生薬名:タラ根皮)で胃腸病、強壮などに薬効があり、ダイエット茶としても有効だ。

イヌガヤ(犬榧)  
イヌガヤ科 イヌガヤ属

葉が羽状の常緑針葉樹で見た目がカヤ(榧)にそっくりだが、カヤに比べて有用性が低いと位置づけられて「イヌ(犬)ガヤ」、あるいはカヤに似ていても核が苦くて食べらず本物ではないから「イヌ(否)ガヤ」とも。尖って見える葉先も実際は柔らかく、素手で触っても痛くはない(カヤは痛い)。種子に豊富に含まれるオイルは食用には向かないが、その炎が明るいために灯油として重宝され、神社の燈明にも使われてきた。分布域は広く、実際に民俗利用事例も多い。

アオキ(青木) 
アオキ科 アオキ属

常緑低木。葉も枝も幹もすべてが青緑色をしていることからこの名が付いている。日光が届きにくい林床に育ちやすい特性から、室内や北向き軒下などの観葉植物として植えられることも多い。青い果実も熟すと赤いダルマのような姿になり、ヒヨドリたちの好物でもある。葉は薬効が高く、揉んだ汁は切り傷や軽いやけど、腫れものにつけるとよいとされる。また江戸時代の大ヒット薬「陀羅尼助」の原料ともなった。

アブラチャン(油瀝青) 
クスノキ科 クロモジ属

クロモジの仲間で、枝葉はおだやかながら良い香りを持つ。落葉樹で、葉柄に赤みがあり、やや湿り気のある林縁や沢筋などに自生しやすい。材は燃えやすく油分が多く含まれ、素材がしなって加工しやすく水分をよく弾くことから「かんじき」など雪中民具の素材として重宝されてきた。果実を絞って得られるオイルは灯し油の材料にもなった。別名「ムラダチ」は群立の意味で、ひこばえが出やすい。早春に黄色い花が咲いて、山に春がやってきたことを教えてくれる。

フサザクラ(総桜、房桜) 
フサザクラ科 フサザクラ属

「フサザクラ」と言いながらもサクラの仲間ではない。早春に葉より前に、ポンポン状の深紅の花が一斉に咲き、その様子が春のサクラのように見えることが名の由来。その美しさも相まって、暮らしの中では古来身近に親しまれてきた樹種であり、建具や薪に使われてもきた。谷や沢沿いの湿り気がある場所に立つ落葉樹で、葉先が細長く伸び、葉柄が長いのが特徴。若い葉は赤みを帯びることがある。鋸歯の形もユニークなのでよく観察したい。

カラスザンショウ(烏山椒)  
ミカン科 サンショウ属

樹高10mを超えて大木になるサンショウの仲間。葉は奇数羽状複葉で長さは80cmにもなる。特に若木の幹には鋭いトゲが多いが、年数を経たものはこぶ状になる。日本ではすりこぎの材などに使われ、食す習慣は無いが、葉や果実は匂いが強く、中国などでは重要な食のハーブである。伐採した明るい山野や崩壊地、山火事などの後に真っ先に生えてくるパイオニアプランツの代表。名の由来はカラスが集まってこの果実を食べるところから。

サザンカ(山茶花) 
ツバキ科 ツバキ属

ツバキの仲間の常緑小高木。庭木として生垣に広く用いられている。見た目はヤブツバキに似ているが、比べてみると葉は小型で、開花期もヤブツバキより専ら早く晩秋から咲き出し、花弁が1枚ずつ散るのが特徴(ヤブツバキは花ごと落ちる)。花はてんぷらにすると甘みがありおいしくいただける。種子から絞って採れるオイルはツバキ同様に食用や整髪料になる。ツバキは別名でカタシとも呼ばれ、こちらは別名ヒメカタシ。

コクサギ(小臭木)  
ミカン科 コクサギ属

山あいの谷沿いや川筋に自生がよく見られる落葉低木。光沢のある葉が左右交互に2枚ずつ並ぶ、珍しい葉序を持つ。葉を揉むとグリーンカレーのような特有の匂いがあり、かつてはその葉の煎じ汁を牛馬の皮膚にかけて虫を退治したり、根を食中毒時などの催吐剤にしたりと、暮らしの身近で活用されてきた。そのため「ウマアライノキ(馬洗いの木)」という名で呼ぶエリアもある。果実の形もユニークで4つに分かれて付き、こちらもしっかりと匂う。

ヒサカキ(姫榊、柃)  
サカキ科 ヒサカキ属

サカキより小型で、“姫(=小さい)サカキ”が名の由来。常緑で葉がツヤツヤとしており、先の方がちょっとくぼんでいる。サカキが少ない東日本では代わりにヒサカキが神事で用いられる。春、サクラが開花するくらいの頃、黄白色の花が枝にびっしりと連なって咲く。その際に放つ匂いがプロパンガスに似ており、ガス漏れと通報されてしまいがちである。実際はその匂いを糞と間違えたハエがやってきて、ヒサカキの受粉を促してくれる。

和ハーブレシピ
和ハーブ・グリーンカレー

タイ国の伝統料理グリーンカレーを、マイルドさとスパイシーさを兼ね備えた和の素材でしっかり再現。 鶏肉とココナッツミルクの旨みが美味しさに奥行きをもたらします。さらには薬効もたっぷりつまった滋養メニュー。辛さはお好みで調整を。

材料(4人分)
<グリーンペースト>
シシトウ・・・5本
青トウガラシ・・・5本
ミョウガ・・・2個
セリ(根付き)・・・1株
シソ・・・5枚
カキドオシ
(エゴマ、ハッカなどで代用可)・・・少々
ニンニク・・・5片
ショウガ・・・10g
和柑橘 (ユズ、 カボスなど)の乾燥果皮
・・・10g
和柑橘の搾り汁・・・大さじ2
サンショウ粉・・・小さじ1
味噌・・・大さじ1
カレー粉・・・大さじ1

具材
鶏肉・・・300g (一口大に切る)
黒砂糖・・・大さじ1~2
ココナッツミルク・・・200cc
魚醤(または塩)・・・適宜

作り方
1.グリーンペーストの材料をざく切りにし、 フードプロセッサーでペースト状になるまで攪拌する
2.鍋を熱して鶏肉を炒め、 1を加えて香りを立てる。
3.2にココナッツミルクを少しずつ加え、 その都度混ぜる。香りが立ってきたら黒砂糖と味噌を加える。
4.全体がなじんできたら火を止め、魚醤を加えて混ぜる。