顧問紹介
最高顧問 水野 瑞夫(薬学博士/岐阜薬科大学名誉教授)
『和ハーブを通じて伝えるべき 植物・自然との共生』
私にとって植物たちは人生の伴侶であり、一生の勉強の題材であります。そして、その学校たる伊吹山(岐阜県と滋賀県に跨る霊峰)は、薬学・植物学を志す者ならば必ず訪れるといわれる聖地で、植物の種類は1,300以上、そのなかでも和ハーブ(有用植物)は280種類にも及びます。
私は大学生の頃からこの伊吹山へ数え切れないほど通い、今でも年に数回は登りますが、その度に新しい発見があります。以前は今のように交通事情が発達していなかった為、麓から険しい道を歩き、寒さに凍えたこと、足が痛かったこと、そして道筋の人々に優しさをいただいた思い出があります。
そして現在も薬用植物としてのシャクナゲ研究を核としながら、日本全国の山々に登り、さまざまな植物たちと触れ合える喜びこそが、87歳を迎えた私が健康で精力的に活動を行える源であります。伊吹山の麓の大垣という地に居を構え、50歳で家督を譲ってから日本初の本格的な植物図鑑を書き上げた飯沼慾斎公が、私のお手本です。
当協会の代表理事である古谷さんとの出会いは、協会主催の「伊吹和ハーブ塾」です。以来、全国から集まる熱心な方々とご一緒しております。忘れられつつあった日本の有用植物の分野に“和ハーブ”という新しい切り口で光を当てることによって、お若い皆さま方が参加していかれるのを目の当たりにし、大変な希望を感じ得られる時間です。
植物への関心の入口は、現在いろいろな形で広がっているようです。それ自体は喜ばしいことですが、単に名称を知っていても、実際に目の前にある植物たちの見分けがつかないというのは、やや残念なことでもあります。本書で紹介している和ハーブをごく身近な自然で見つけることは、そう難しい事ではありません。正しく採取し、活用するには、その区別の方法や利用法を学ぶことがとても大切です。実際に目にして、触れて、感じてもらうことが、その重要な基本となります。海外ハーブだと思っていたものが、じつは日本古来のものでもあったという気づきも得られるでしょう。そして日本では、必要な有用植物を、自然から採取するだけではなく、計画的に栽培をしてきた歴史もあります。それも今後踏襲していければ、この自然環境から和ハーブの絶滅は起こらないはずです。
環境との調和が望まれる今世紀において、謙虚に、自然のありのままの姿を感じていただきたい。そして人間社会との共生を図りつつ、少しでも自然を守り育てる道を探ること。当協会の「和ハーブプロジェクト」を通じて、日本に生きるお若い皆さま方が、そのような志を高く持っていただけることを期待しております。
■プロフィール
名誉顧問 水野 瑞夫
Mizuo Mizuno
岐阜薬科大学名誉教授
薬学博士、岐阜薬科大学教授(生薬学教室)、学長(第7代)歴任。現在同大学名誉教授。2010年4月 「春の叙勲」にて瑞宝中綬章を受賞、日本の生薬研究の第一人者である。中国薬科大学及び中国科学院武漢植物研究所客員教授、自然学総合研究所会長、日本食品研究振興財団理事。国内外の有用植物をこよなく愛し、植物・薬草関連著書多数。