顧問紹介 

顧問 小海 壽子(植物研究家)

『昔は満ち溢れていた自然の知恵、若い世代に伝える事に生き甲斐を』

 私は雪深い新潟県南魚沼郡で育ちました。春や初夏の休日の朝には、母や近隣の大人たちがカゴを背負って意気揚々と山に出かけて行ったことが、幼少の記憶として鮮明に残っています。母たちは山に生えていた山菜や野草たちを摘んで帰宅した後、中身をゴザに広げ、子どもたちに名前や種類を教えながら仕分けを手伝わせるのが、我が家の日課でした。母は仕分けの最中に手際よくお湯を沸かし始め、アク抜きなどの準備をします。そんな母の「山の植物は手早く処理しなければ、味が山に帰ってしまう。だから必要な量だけを山から分けていただく」という言葉は、今でも非常に強く私の印象に残っています。

 こうして生活のど真ん中で自然の恵みに接して育った私は、小学生の頃から植物への愛とインスピレーションを意識していました。やがて上京して結婚、仕事・子育ての傍ら、今の住まいの鎌倉へと移る中で、植物の大家である御所見直好先生との素晴らしい出逢いに導かれました。

 御所見先生は「春の元気な新芽を食せば、一年中、身体が丈夫で病気をしない」と、たびたびおっしゃられました。今なお私はそれを実践しているせいか、ここ何十年も風邪など病気らしい病気がほとんど無いのが自慢です。同時に鎌倉は里山・低山の地域であるため、新潟のように山菜が豊富ではなく、いわゆる野草的なものを食す研究をしてきました。植物の素晴らしさを最初に教えてくれた亡き母に、「なんで山菜ではなく“草”を食べるの?」と驚かれた笑い話が思い出されます。今でも春から秋にかけては、八百屋やスーパー等で野菜を買う事はほとんどなく、野山や庭に自生する生命力あふれる和ハーブが、我が家の食卓の主役です。

 現在は当協会のコンセプトに賛同し、植物のアドバイスや「鎌倉和ハーブ塾」での講師をさせていただいております。受講生の方々は若い女性も多いのですが、毎回和ハーブの知識や知恵を学ぼうという情熱がひしひしと皆さんから伝わり、喜びとやりがいを感じます。彼女たちは様々なハーブやアロマなどのご資格をお持ちにもかかわらず、現物に触れる機会が少なかったようで、ヨモギの見分けがつかない人も少なくありません。一方で、周囲に和ハーブが豊富にある環境にお住まいの方であっても、そのような植物の知恵と暮らしが縁遠くなってきているようです。そのため講座に参加して改めて、日本人の植物文化の奥深さに衝撃を受けるようです。

 こんな現実に触れながら、日本人の素晴らしい知恵と文化を伝授していく使命感を感じるとともに、皆さまが和ハーブというジャンルに少しでも興味や関心をお持ちいただけるようにと、心から願っております。

■プロフィール 

顧問  小海 壽子

Hisako Kokai

植物研究家

自然の宝庫、新潟で幼少の頃から和ハーブに親しみ、成人後、御所見直好氏に師事。

テレビ東京『レディス4』にて、和ハーブ料理指南役として出演。 通販誌『千趣会』で3年以上、自由民主党の機関紙で6年以上、和ハーブに関するコラムを連載