顧問紹介

顧問 石上 七鞘(民俗学・古代日本文学博士/松蔭大学教授)

『和ハーブを知ることは、日本人らしさを学ぶこと』

 和ハーブを知ることは、“古(いにしえ)から受け継がれてきた日本人の生き方そのものを学ぶこと”であります。しかし、日本の良さを見直す機運は少しずつ高まっているとはいえ、明治維新から第二次世界大戦後の復興に至るまで、諸外国の文明の利器に追いつけ・追い越せの精神性は、近・現代の日本人に根付いてしまっているような気がします。私は、民俗学と古代文学の教授として教鞭をとらせていただいていますが、若い世代に日本伝統文化の伝えていくには工夫がいりますし、なかなか一筋縄ではいかないと感じております。

 そんななか、当協会代表の古谷暢基氏が、“日本の風土に育ち、日本人が古くから活用してきた有用植物”に「和ハーブ」と名付けカテゴライズしたことは、とても実践的かつ、グッドアイディアかと感じる次第です。そもそも、日本人の生活民俗は植物によって支えられてきたのですから。

 私の父は民俗学の大家・折口信夫(おりぐちしのぶ)に師事し、都立高校の教諭の傍ら、週に1日、母校の國學院大學の民俗学講師として教鞭を執っていました。私の「七鞘」という名前は折口先生が名付け親です。成長した私は、父に次いで國學院大學に進学し、折口先生の高弟、高崎正秀教授文学第一研究室の詰襟の学生となったのです。そこで、日本の文学研究と民俗学をみっちり学びました。恩師の高崎先生は学問よりも人の道に厳しい先生で、先輩方の中で破門されるのを見て参りました。折口先生は「民俗学は日本人の生活の古典であるともに、自己内省の学でもある」と定められました。学問には、自分の志や勉学の厳しさ、甘さがそのまま出るものです。

 私の主な研究テーマのひとつ、古代文芸において、以前、「箸道(はしどう)」の団体において理事長を務めておりました。その折に「箸と日本古来の食文化」について研究を深め、日本人の美と健康と文化の源は日本由来の有用植物にあることに気づかされ、感銘したことを記憶しております。和ハーブ協会を通じての活動は、私のモットーである日本伝統文化の伝道師の立場と一致するところが大いにあることを感じております。

 現代において和ハーブを学ぶ皆さまの生活が、生き生きと、より楽しくなることをご期待申し上げるとともに、日本の宝物「和ハーブ」の伝道師として、共に歩みましょう。

■プロフィール 

顧問  石上 七鞘 
Nanasaya Ishigami 

松蔭大学教授
民俗学・古代日本文学博士。松蔭大学コミュニケーション文化学部長として教鞭をとる傍ら、日本古来の伝統文化や土地に纏わる暮らしぶりを研究・伝承・継承する執筆・講演家。高崎正秀博士記念賞受賞、上代文学会理事、NPO法人現代女性文化研究所理事、公益財団法人ミツノ教育振興財団理事、民俗学研究所所長、上代文学研究所所長。
NTV系「世界一受けたい授業」、スカイパーフェクTV!等のテレビ出演、和の伝統文化に関する書籍監修多数。自著に『日本の民俗伝承』(蒼洋社)、『化粧の民俗』(おうふう)、『日本の原点』(マイナビ)ほか。