◆日本人らしい健やかさ、美しさ、感性を導くもの
植物がもつ香りに触れ、豊かな味を楽しみ、自然の色を目にしたとき…心や身体が元気づけられたり、ほっこりと和んだことはありませんか。
世界のあらゆる「人が生きる場所」では、その土地の植物たちが、お茶を含む食、療法、生活グッズなどになり、日々のさまざまなシーンを彩ってきました。
そして今この日本でも、女性を中心に「ハーブ」や「アロマテラピー」など、植物の力を取り入れたライフスタイルが人気です。
でもちょっとだけ思い巡らせてみましょう。
どうして、私たちが手に入れられるハーブ・アロマ素材のほとんどが海外由来のものなのでしょうか?
実は日本にも、オリジナルのハーブがあることをご存知でしょうか。
それらを「和ハーブ」と呼びます。
日本をふるさととして古くからこの風土に育ち、日本人とともに長らく生きてきた植物たちです。
◆『身土不二(しんどふじ)』の贈り物
ご存知でしょうか?仏教由来ともいわれる「身土不二」という言葉は、「人にとって自分の身体【身】にふさわしいものは、生まれついた土地【土】のものであり、それはこの世にふたつとない【不二】」という考え方にもとづいています。
古来日本では、植物が人の暮らしに深く根づき支えていることが当たり前でした。だけどそうした文化は、文明の利器の発展や海外文化の導入で影をひそめていったのです。
まさに「和ハーブ」は、身土不二の視点からとらえることができる「にほんのわすれもの」といえるのです。
けれど今再び、植物が身近にあるライフスタイルに注目が集まっているのは、人が植物そのものによって生かされ、なくてはならない存在であるからこそだと筆者は考えます。
日本の地に生きる私たちに宿る、本来の健やかな心と身体、そして感性(文化)は、私たちの祖先を脈々と支えてきた「和ハーブ」からの「贈り物」なのではないでしょうか。
◆具体的に「和ハーブ」ってどんなもの?
さて、ここまでお読みくださった皆さんならば、もう予想がつくかもしれませんね。
たとえば、「シソ(紫蘇)」、「ミツバ(三つ葉)」、「ユズ(柚子)」、「サンショウ(山椒)」、「ショウガ(生姜)」…といったものは、なんだか私たちにとってすごく身近に感じませんか。
それから私たちの暮らしの中で当たり前のようにある、「緑茶=『チャノキ(茶ノ木)』」も、香りと薬効豊かな和ハーブの典型です。
さらに草餅に使われる「ヨモギ(蓬)」は、香りも薬効にもすぐれている、隠れた「日常和ハーブの王様」です。
ほかにも、つまようじの素材として知られる、「香りの和ハーブ=『クロモジ(黒文字)』」や、
あまり聞き慣れないところでは、「和のオリジナルローズ=『ハマナス(浜茄子)』」。
さらに「和のタイム=『イブキジャコウソウ』」なども海外ハーブと肩を並べる素敵な存在。
こうした香り豊かな日本の有用植物たちは、どれも和の伝統的なナチュロパシー(自然療法)素材として、親しまれてきたものばかりなのです!
ちなみに、海外ハーブに比べて和ハーブは、香りや味わいが一般的におだやかなものが多めです。
野菜・キノコなどのちょっと淡泊な味はもちろんのこと、魚や肉などの素材自体の味を、不思議と引き立たせてくれます。